Work in Local×Social
えらべる「半福半X」という働き方
01 はじめに
離島×福祉の「二重の人材難」。どう向き合う?
社会福祉法人武蔵野会が運営する障がい者支援施設「大島恵の園」「第2大島恵の園」がある伊豆大島では、福祉の担い手不足が深刻化していました。全国的な福祉人材の減少に加えて、離島の地理的条件は、採用・定着のハードルをさらに高くします。
一方で、伊豆大島は観光地としても人気があり、「ローカルで暮らしたい」と考える若者との潜在的な接点があります。しかし移住を考えるときに壁となるのは、「仕事が少ない」という構造的な課題でした。

そこで武蔵野会とぼくみんは、ふくしデザインセンター構想の重点プロジェクトとして、「仕事がない」とされる地域でも選べる働き方として、「半福半X」という生き方を提案する新しい地域採用プロジェクトを立ち上げました。
プロジェクト名である「Work in Local×Social」は、編集者の影山裕樹さん、地域活動家の小松理虔さん、デザイナーの田中悠介さんとともに企画し、福祉とローカルの接点をひらく意思をこめて名付けました。

02 プロジェクトの特徴
「福祉×やりたいこと」でひろがる、生きる選択
半福半Xとは、「福祉の仕事」を生活の基盤としながら、もう一つの活動・仕事・関心(=X)を併せもつ、ローカルに根ざした新しい働き方です。これは単なる人材確保策ではなく、ローカル志向の若者が地域で生きるための「選択肢の拡張」を目指すものです。
Webサイトには次のように記しました。
福祉の仕事は、土地の暮らしに寄り添い、「その土地をおもしろがるまなざし」と深くつながっています。その意味で、ローカルと福祉はもともと親和性の高い領域なのです。

03 取り組みの全体像
Web、ツアー、イベントなどを組み合わせた複合プロジェクト
1)Webサイトの立ち上げ
「えらべる半福半X」というコンセプトを掲げ、求人、インタビュー、島の魅力などを発信。

2)日本仕事百貨への記事掲載
新たな層に届けるため、求人メディア「日本仕事百貨」に取材記事を掲載したほか、同メディアが企画した2泊3日のキャンプイベントにも参加。離島暮らし、福祉、ローカル志向の若者との出会いが生まれました。

3)伊豆大島ツアー&ワークショップ(2023年夏)
ローカル志向の若者20名が参加。1泊2日のフィールドワークを通じ、島で活動する人たちと交流したり、島の自然、食、暮らし、福祉の現場に触れ、半福半Xの新たなアイデアを構想しました。

波浮散策

大島恵の園見学の様子

ワークショップの様子
4)公開プレゼンテーション
都内の竹芝にあるパーティスペースにて、島で生まれたアイデアを、70名の観客を前に発表。島の方々や、島に関心のある方との新たな関係づくりの入り口にもなりました。


04 生まれた成果
若者・企業・まちのあいだに立ち、長く続く関係の芽を育てる
ぼくみんが担ったのは、メディア制作やイベント設計だけではありません。
- 島で暮らしたい若者の関係を汲み取る
- 福祉が受け入れ方を柔軟に変えていく流れを支える
- 地域の価値、文化、暮らしを見つめ直す視点をともに育てる
という、関係づくりにおける総合的な伴走でした。
そして、半福半Xは、伊豆大島だけのものではありません。ローカルで生きたい若者と、地域に根ざす福祉との新しい関係をつくる取り組みとして、全国の地域にも転用可能なコンセプトです。
これからわたしたちは、地域で暮らす・働くことの選択肢を広げる取り組みを、地域のプレイヤーとともに育てていきたいと考えています。






