ふくしデザインセンター構想

福祉法人に「岬」はつくれるか?!

Team社会福祉法人武蔵野会 × ぼくみん

01 はじめに

デザインによってひらかれる、ふくしの仲間さがし

福祉の担い手が減り続けるなか、「福祉の内側だけで未来をつくることはできるのか?」そんな根源的な問いから、ぼくみんと武蔵野会との協働が始まりました。「デザイン」を通じて福祉を外側へひらき、「採用」ではなく「仲間になる」関係をつくり直す。そのための総合的な実践が、ふくしデザインセンター構想です。

02 構想が生まれた背景

日本社会全体にひろがる、少子化、働き手不足、福祉の魅力や価値が伝わりにくい構造

社会福祉法人武蔵野会(東京都八王子市/職員約1,200名)は、広域で多様な福祉事業に取り組んできた法人です。当時の理事長・高橋信夫氏は、東京都社会福祉法人経営者協議会の副会長も務め、東京・日本の福祉の未来を見据えながら 組織経営を行っていました。

対話を重ねるなかで共有されたのは、「福祉を外へと開かなければ、明日はつくれない」という危機感でした。少子化、働き手不足、福祉の魅力や価値が伝わりにくい構造。これらは武蔵野会だけの課題ではなく、日本社会全体の課題です。

そこで生まれたのが、制度としての「福祉」を、誰にとっても身近な「ふくし」にひらく「ふくしデザインセンター構想」でした。この構想には、福祉、デザイン、まちづくり、大学、行政、若者など、多様な人びとが参画し、対話と実践、共同学習が積み重ねられていきました。その中心にあったのは、「関係そのものをデザインする」という視点です。

03 主要プログラム

関わるなかで「仲間になっていく」4つの取り組み

構想が目指したのは、従来の「採用する/される」を越え、関わるなかで「仲間になっていく」という関係の再設計でした。

1)ふくしデザインゼミ

構想の出発点となったプログラムです。福祉・心理・教育だけでなく、デザイン、建築、まちづくりなど多様な若者が、武蔵野会の現場や地域をフィールドに、対話・企画・実践を行いました。

  • 『武蔵野会に関わる人図鑑をつくろう』の発刊
  • 八王子市内のギャラリースペースでの『ふくしデザインゼミ展』の開催
  • 2023年グッドデザイン賞受賞

この実践は他法人・医療機関へも広がり、若者と福祉が出会う新しいモデルとして展開しています。

キックオフ集合ゼミ

フィールドワークの様子

公開プレゼンテーション

ふくしデザインゼミ展

オープンフォーラム「ふくしをひらく」

ふくしデザインゼミ「武蔵野会に関わる人図鑑をつくろう」

2)新しい「仲間さがし」

採用の「常識」から降り、就職活動/採用プロセスそのものを再設計しました。

  • ブランド/ステイトメントの再構築
  • 説明会、面接、現場訪問を「対話の場」へ
  • 会場構成の再設計、若手コーディネーターの登用
  • 面談回数の増加
  • 現場職員の参加促進

表面のリニューアルではなく、相互理解を中心とした採用文化づくりに取り組みました。結果として採用人数も増加し、本部の採用チームも強化され、組織的な体制整備も進みました。

内定者ゼミ

「武蔵野会の仲間さがし」採用パンフレット

3)Work in Local×Social

伊豆大島を舞台に、「半福半X」という新しい働き方を提案。武蔵野会が抱えていた「離島の担い手不足」の課題に対し、単なる人手確保ではなく、離島というローカルの魅力を生かした新たな働き方・暮らし方を提示しました。

  • 島内の実践者との連携・協働
  • 短期滞在型の越境プログラム
  • 都内でのプレゼンイベント・説明会・交流会の開催
  • ローカルと福祉を自由に往還する働き方の提案

福祉の枠を越え、ローカル志向の若者や社会課題に関心をもつ人たちにも呼びかけ、島で働くこと、島で暮らすことを魅力ある選択肢として提示しました。

Work in Local×Social
プロジェクトの詳細はこちらから

4)ふくしデザイン会議

理事長・理事・施設長・中堅/若手職員、内定者、他の福祉法人関係者、さらに福祉外のビジネスパーソンやクリエイター、大学生なども参加し、立場や年齢を越えて語りあう越境的な対話の場を実施しました。

  • 「ふくしデザインセンター構想」をテーマにした深い対話
  • 組織や地域の「これから」をともに描く時間
  • 参加者一人ひとりがエンパワメントされる場づくり

単なるアイデア会議ではなく、未来をともに描く対話文化を育む取組みとなりました。

04 これからの展望

地域や法人を越える、これからの福祉の方向性を示す「岬」

ふくしデザインセンター構想は、既存の福祉の枠を越え、これからの福祉をつくる「変化のうねり」を生み出す試みです。

  • 若者・職員・地域・大学が混ざり合う関係づくり
  • 採用・広報・研修・組織開発を横断する総合的実践
  • 対話と学びを通した新たな担い手・理解者の育成
  • 他地域/他法人への広がり

この構想は武蔵野会にとどまらず、これからの福祉の方向性を示す「岬」として、地域や法人を越えて広がりつつあります。

資料案内

取組みの詳細は以下をご覧ください。

【校了版】ふくしデザインセンター構想_冊子